(株)いぶきの理念と方針

会社設立の趣旨

 近年、久万林業地(上浮穴地域)においても過疎化、高齢化の波は押し寄せてきており、林業従事者の高齢化に伴う林業労働力の減少は深刻な問題であります。
 これまで、個々の林家及び森林組合作業班を主体として森林施業管理を行ってきましたが、年々減少を続けるそれらの労働力では、今後、郡内森林の適正な管理もできなくなることが予想されます。
 このような状況を打開し、今後とも継続的に森林施業管理、継続的な林業生産活動を行っていくため、平成2年、第3セクター(官民共同)方式による林業担い手会社「(株)いぶき」を設立しました。
 当初、久万町が「ふるさと創生事業費」の1億円を活用し設立したわけですが、その後、郡内5カ町村の組織として広域化し、現在に至っています。(広域町村合併により旧久万町・面河村・美川村・柳谷村の4か町村が2004年8月に合併し「久万高原町」となっています。)

 

社員の受け入れ態勢

 3K(汚い・きつい・危険)と言われた林業労務にこれだけの若者が集まったのは、通年雇用の確立

、月給制、諸手当の充実などの待遇面の改善が大きい。
 これまで、林業従事者の就労形態は日雇いが多く、他産業に比べ雇用条件が一般水準に達していなか

った。(株)いぶきでは、週休二日制、年次有給休暇、各種保険完備、年金・退職金制度完備、住宅完

備など、雇用条件を地方公務員並にした。これで林業労務も他産業並となり、就職口の1つとして若者

に認められた訳である。
 (株)いぶき社員ののうちUターン者は、前職も林業とは関係のない職業に就いていた者が多く

、入社した動機も様々である。地元に帰ることになり、再就職口を探したところ、いぶきがあったので

就職したという人が多い。(国内で社員40名を超える事業体は非常に少ない)しかし、中には森林林

業・自然環境に関わる仕事をしたかった人、田舎での生活を希望した人など、Iターンで就職した者も

多数存在する。また若い女性の方も現場作業に就き、男性同様に働いている。

 

 

林業機械化の推進

 林業は労働災害の強度、発生率ともに高い仕事である。それは急傾斜地などの不安定な地形で木材と

いう重量物を扱う仕事であるため、やむを得ないことではある。いぶきにおいては、労働災害を軽減さ

せるため、なるべく人の手による仕事を減らそうと機械化の推進に努めている。
 いぶきの業務の大半は、伐出作業である。中でも林内作業車道等の路網整備とセットとなった搬出間

伐業務が多くを占めている。いぶきでは、チェーンソーで伐倒、グラップルによる木寄せ、プロセッサー、ハーベスター等を私用して枝払い、玉切り、フォワーダによる搬出といったような作業システムをとっている。素材生産でとりわけ災害発生頻度の高いと言われる枝払い作業などは極力高性能林業機械で行うなど、徹底して労働災害縮減に努めている。
 労働生産性も従来のチェーンソー+林内作業車による作業システムに比べ、飛躍的にアップしてい

る。

 

 

朝日森林文化賞受賞

 平成9年6月27日、東京都において第15回朝日森林文化賞(朝日新聞社・森林文化協会主催)の

贈呈式があり、(株)いぶきが表彰を受けた。これは古い体質が残る林業界にあって、近代的な雇用条

件で若者を引きつけたことや林業機械を駆使した作業などが林業家に高く評価されたものである。
 この日の式には社員全員で出席した。(社員旅行を兼ねたそうである)

 

 

今後の取り組み

 (株)いぶきは、林業の担い手としての役割のほか、雇用の場の創出により地域に若者を定着させ、

地域の担い手を確保し、地域の活性化を図るということにも貢献している。
 将来的には、より効率の良い事業を行える体制づくりを行い第3セクターと言えども自立した経営を目指し、継続的、安定的に地域に貢献できる組織として存続していくことを目指している。

 

参考)
パンフレット「上浮穴林業の担い手」
中予山岳流域林業活性化センター発行